秩父鉄道は、35周年を迎えた蒸気機関車けん引の観光列車「SLパレオエクスプレス」の2023年の運転を4月1日(土)に開始し、12月3日(日)までの土日祝日を中心に計80日間運転します。
SL復活のきっかけは「さいたま博」
埼玉県熊谷市で開催された地方博覧会「さいたま博覧会」を記念して1988年(昭和63年)3月に運行を開始し、秩父路の観光になくてはならない存在として親しまれています。列車名は、秩父地方におよそ2000万年前に生息していた海獣「パレオパラドキシア」にちなんでいます。
C58形363号機は1944年(昭和19年)製の機関車で、貨車も客車もけん引する万能機として東北地方の国鉄で活躍しました。1972年(昭和47年)の引退後は吹上町立吹上小学校(現在は鴻巣市立)の校庭で静態保存されていましたが、博覧会の目玉企画という大役に抜擢され、秩父鉄道所有のSLとして車籍が復活しました。
運行35周年を記念して制定されたロゴマークは、懐かしくアンティークな雰囲気です。秩父鉄道によると、「時代を超えて愛されてきたSLパレオエクスプレスに宿るあたたかさ」を表現したとのことです。
運行初日の4月1日(土)は「SLファーストラン号」として、機関車の正面に特別ヘッドマークや日章旗が掲出されます。熊谷駅で開催される出発式には、2012年(平成24年)からSL車内での案内アナウンスを担当している秩父市出身の落語家、林家たい平師匠が出演し、長瀞駅までSLに乗車する予定です。
軽妙な語り口で親しまれているたい平師匠の車内アナウンスは、今年の運行を機に11年ぶりにリニューアルされます。「長瀞トリックアート有隣倶楽部」をはじめとする沿線の新しい施設紹介が盛り込まれ、秩父路の最新の観光情報を発信するとのことです。
「SLファーストラン号」の運行に合わせ、当日は各停車駅のホームに沿線のご当地キャラクターが登場してお出迎えするほか、終点の三峰口駅を発着する際には、この地に受け継がれてきた祭り囃子「秩父屋台囃子」の披露も行われます(「SLパレオエクスプレス」の運転時刻・運転日カレンダー、記念ロゴマークなど詳細は下の図表を参照)。
紙券の「フリーきっぷ」は廃止
熊谷駅〜三峰口駅間を1日1往復する「SLパレオエクスプレス」は全車指定席で、インターネットの「秩父鉄道SL予約システム」からの事前予約と、お一人1,100円の「SL指定席券」の購入が必要です。社会情勢の変化により石炭や重油など、運行に関わる経費が増大しているとのことで、「安定した運行継続のため」今シーズンから値上げとなります(2022年までは740円)。
今後、クレジットカード決済でSL券を購入できるシステムを導入し、よりスムーズに利用できる環境を整備していくとのことです。
また、下りのSL列車内で発売されるオリジナル弁当がリニューアルされ、沿線のお食事処「ガーデンハウス有隣」(長瀞町)が手がけたSL弁当「いろどりの秩父路」を事前予約により購入できます。SLの各運行日には、機関車の向きを回転させる転車作業や、石炭ならし、給水などの整備作業が三峰口駅構内で13:00〜13:40頃に実施され、「SL転車台公園」から間近で見学することができます。
SL乗車時にも利用できる秩父鉄道の企画乗車券のうち、窓口販売の「秩父路遊々フリーきっぷ」「長瀞秩父おでかけきっぷ」の2種については、2023年3月31日(金)をもって発売終了となります。MaaS(Mobility as a Service)アプリ「EMot」で上で「秩父路遊々フリーきっぷ デジタル版」が2021年11月に発売開始され、紙券の利用が減少しているのが理由で、今後はデジタル版に一本化されます。
また、2022年3月に交通系ICカード「PASMO」のサービスが同社に導入されたことを記念し、「急行秩父路」の急行料金を無料化するキャンペーンが展開されていましたが、こちらも2023年3月31日(金)をもって終了となります。4月1日(土)以降に急行列車に乗車する際は従来通り、大人210円・小児110円の急行券を購入する必要があります。